タイ旅行の経験者の中には、タイの過ごしやすさ、タイ人の優しさなどに魅力を感じ、できればタイに長期滞在したいと考える人も多いです。
しかし、日本人はビザなしでは、タイに30日間しか滞在できません。
このページでは、
- 長期滞在が難しいタイの現状
- タイに長期滞在できる資格(ビザ)
- タイで長期滞在する方法
について紹介していきます。
タイは長期滞在に向いていない?
多くの日本人にとってタイは非常に住みやすく、長期間滞在していても飽きることのない国だと思います。
私は2020年でタイに住んでちょうど10年になりますが、まだまだこの国に魅力を感じています。
しかし、その住みやすさ、快適さに魅せられた外国人がタイに大量に押し寄せるようになり、タイ政府もタイにメリットのない外国人を排除しにかかるようになりました。
そのため前提として、現在のタイは長期滞在が難しくなってきているという点をお伝えします。
かつては長期滞在者が容易だった
元々は、観光ビザを繰り返し取得すれば、誰もが長期間タイに滞在することができました。
私の友人にも、日本の期間限定リゾートバイトで数か月お金を貯め、残りをタイで過ごすというような人がたくさんいました。
決して贅沢はできませんが、月2万円くらいの家に住み、毎日ビールを飲んでダラダラと過ごしたり、好きなことをして暮らしていくことができたのです。
それが可能だったのは、システム上、外国人に対してウェルカムな空気があったから。
しかし、近代化が急速に進むタイでは、そのシステムが失われつつあります。
無利益な長期滞在者の排除
近代化に向けて、タイに長期滞在ができるシステム自体がまるっきり変わってしまったため、現在は目的なしにダラダラと長期間滞在するのが難しくなってきています。
特に、大したお金も落とさずにダラダラと過ごす外国人には容赦なし。タイは徐々に、金持ちを優遇するシンガポール化しつつあります。
しかし、タイに長期滞在できるビザなどをとれば、現在でも長期滞在は可能です。
タイに長期滞在できるビザ
合法的にタイで長期滞在するための資格(ビザ)について紹介していきます。
一応初めに言っておくと、タイでは外国人の滞在に関するルールがコロコロと変わります。毎年変わるようなこともあります。
今のところの、それぞれの滞在資格での最長滞在期限はこんな感じ。
滞在資格 | 最長滞在期限 |
観光ビザ | 90日 |
学生ビザ | 1年前後 |
就労ビザ | 退職するまで更新 |
結婚ビザ | 離婚するまで更新 |
リタイアメントビザ | 1年ごとに更新 |
タイランドエリート | 最長20年 |
APECカード | 最長5年 |
それぞれの滞在資格を詳しく見ていきましょう。
観光ビザの期間と費用
滞在可能日数 | 90日 |
ビザ代金 | 3000円~4500円 |
その他の手続き費用 | 延長費用1900バーツ |
誰もが気軽に取得できるビザで、滞在日数は60日。
観光ビザはタイ国内のイミグレーションで30日の延長ができるので、最大で90日まで滞在することが可能です。
長期滞在者の多くは、まずはノービザ(ビザを取得しないこと)でタイ国内に入って30日間、もしくはタイ国内で滞在期限を30日延長して計60日間をタイで過ごし、
ビザが切れそうになったら、ラオスなどの近隣諸国に旅行がてら、タイ観光ビザの取得に行きます。
観光ビザがあれば最大で90日滞在できるので、ノービザの期間と合わせて150日の滞在が可能。
観光ビザの取得制限
数年前までは、観光ビザを繰り返し取得することができました。
しかし現在は、観光ビザの取得は1年に2回までしかできない、1冊のパスポートに4枚までしか取得できないなどの制限があります。
ただし、これらは原則、ビザを発行する大使館の職員の判断にゆだねられるため、例外もあり。
むしろ、例外がかなり多いので、何が正解なのかがわからない状態です。
例えば、パスポートにタイの観光ビザが5枚ある状態で6枚目を申請しても、取得できる可能性がゼロとは言えません。
しかし、ふんわりとしているとはいえ、ルールがある以上、断られても何も文句は言えません。
取得費用は場所によって異なる
観光ビザの取得費用が一律でないのは、取得国によって金額がはっきり異なるため。
例えば、
- ラオス・ヴィエンチャンのタイ大使館:1000バーツ(3300円)
- ベトナム・ホーチミンのタイ領事館:40ドル(4300円)
- 日本・東京のタイ大使館:4500円
代表的なところだとこんな感じです。
学生ビザ(EDビザ)の期間と費用
滞在可能日数 | 1年程度 |
ビザ代金 | 2000バーツ |
その他の手続き費用 | 7万バーツ(授業料&延長料金など) |
観光ビザを取得しすぎて、もう次がないとなった場合、学生ビザを取る長期滞在者も少なくありません。
これは誰もが気軽に通える語学学校に通うためのビザになり、大学に留学する留学ビザとは全く違います。
EDビザのルールも厳しい
長期滞在のためだけのビザ取得者を阻止するため、学生ビザの取得ルールも年々厳しくなってきています。
現段階では、ビザは2か月ごとにイミグレーションに更新をしに行かなければならない上、定期的にタイの文部省に行ってちゃんとタイ語が喋れるかをチェックされます。
チェックといっても本当に簡単な受け答えなので、タイに1年もいる人には問題のないレベルですが。
ただし、出席日数も調べられるため、ロングステイのためだけにビザを取って学校に行かない人は、2か月に1回のビザ延長で弾かれ、ビザが失効します。
ちなみに、授業は1か月あたり30~40時間。1日2時間のレッスンで週4~5日通うことになります。
授業料は学校によってバラバラ
上記の表の7万バーツというのは目安です。
バンコク以外の都市の学校であれば、恐らく1年で3万~5万バーツくらいの授業料で収まります。
一方で、例えばチュラロンコン大学のタイ語コースは2か月のプランが28000バーツと割高。その分しっかりと学べますが。
単純にロングステイのために適当に学校に行くのであれば、できるだけ安く、自由がきく学校を探すのがいいでしょう。
手続き費用が意外と高い
2か月に1回のビザ更新で1900バーツかかる上、学校によってはそのたびに手数料を取るようなところも存在。
手数料がなかったとしても、更新代だけで1年間で1万バーツかかります。
学生ビザは連続で取れない
例えば、タイ語を学ぶための学生ビザを2年連続で取得することはできません。
1年も学んだんだから、これ以上何を学ぶんだ。と突っ込まれます。
これにより、タイでは学生ビザを毎年取得することによる長期滞在はできなくなりました。
しかし、タイ語を勉強するための学生ビザで1年過ごした後、翌年に英語を学ぶための学生ビザを取得することは可能。言語が違いますからね。
就労ビザ(Bビザ)の期間と費用
滞在可能日数 | 退職するまで |
長期滞在のためというよりも、タイで働くために取得するビザ。
通常は個人で取得することはなく、就職する会社にとってもらうため、取得費用も会社負担になることが多いです。
その会社は、ビザ取得代行業者やコンサルなどに取得業務を依頼することになります。
私が会社を運営していた時には、就労ビザとワークパーミットの実費を入れて2万~3万バーツくらいでした。
業者によって手数料が大きく異なる
ビザ取得代行業者によって、手数料が変わってきます。
就労ビザとワークパーミットの費用は固定ですが、業者の上乗せ分によって数千バーツの差が出ます。
さらに、業者によっては、タイ政府に裏金を払わなければならないというような、よくわからない費用を請求してくるところも多いため気を付けなければなりません。
なお、私は過去に3つのビザ取得代行業者と関わりましたが、そのうち2つは非常に微妙で、現在は恐らく廃業しています。
幽霊会社を作って長期滞在も可能
全くおすすめはできませんが、就労ビザを取得して自由にロングステイすることも、やろうと思えば可能。
タイでは、外国人1人の就労ビザ取得につき、タイ人を4人雇用しなければならないというルールがあります。
そこで、タイ人の名前だけを借りて(業者手数料込みで年間4人3万バーツくらい)、月々の保険料(4人分で月3000バーツ)を支払えば、実在しない従業員を雇ったことに。
あとは、適当にオフィスを借りて会社としての体制を整えれば、実質無期限で長期滞在が可能です。
しかし、もちろん違法な上、お願いする業者にも足元を見られて予想以上にお金がかかります。
タイ人の多い職場に幽霊社員で雇ってもらう
これも違法です。
地方の工場では、タイ人が数十人、数百人単位で働く会社も存在。
コネがあるのであれば、そこで働いている体で就労ビザを取得してもらうことも可能です。
タイ人従業員が多ければ、上述した外国人1人につきタイ人4人のルールは難なくクリアできるため。
ただし、ある程度タイに住んでいなければ、そんなコネはできないでしょうし、当然キックバックが発生するためおすすめしません。
結婚ビザ(Oビザ)の期間と費用
滞在可能日数 | 離婚するまで |
ビザ代金 | 9000円 |
Oビザにはいくつか種類があります。
- 配偶者ビザ:タイ人と結婚する外国人に発行されるビザ
- 家族ビザ:タイの就労ビザを持つ人の配偶者に発行されるビザ
正確には他にもOビザに該当するビザはありますが、代表的なものはこの2つ。
そして、タイにロングステイを狙うのであれば、タイ人と結婚する配偶者ビザを獲得することになります。
確かに、現地人と結婚すれば実質長期滞在が可能ですが、人生そのものが大きく変わります。
滞在する目的のためだけに結婚するのはおすすめできません。
リタイアメントビザ(O-Aビザ)の期間と費用
滞在可能日数 | 1年 |
ビザ代金 | 3900バーツ |
その他の手続き費用 | 1万~3万バーツ |
50歳以上でないと取得できませんが、逆に50歳以上ならリタイアメントビザが最も確実にタイに長期滞在できる方法の1つ。
一応、3か月のビザ取得に2000バーツ、そのビザを延長するのに1900バーツかかりますが、業者に頼む人が多いので、その手数料が別途かかります。
もちろん、手数料は業者によってバラバラ。
なお、リタイアメントビザの取得には、80万バーツの預金口座が必要です。
しかし、お金がなくても取る方法はあり、グレーではあるものの、真っ黒というわけではありません。
ここでは紹介しませんが、預金がなくてもタイのリタイアメントビザを取ってくれる業者はネットで簡単に探せます。
タイランドエリートの期間と費用
滞在可能日数 | 5年~20年 |
ビザ代金 | 50万バーツ~200万バーツ |
50歳未満でも自由にタイに長期滞在できる、タイ政府観光庁による特別なビザのようなもの。
簡単に言えば、金を払えばロングステイさせてあげるよ。というメンバーシップです。
5年のものだと1年あたりのコストが10万バーツなので、ラウンジ利用などの特典があることも考えると、決して高すぎるものではありません。
最も安くて最も長期間滞在できるメンバーシップは、20年で100万バーツ。30歳で取得すれば、リタイアメントビザの年までストレスなくタイにロングステイが可能です。
詳しく書くと何ページも書けるくらいの量なので、もっとよく知りたい人はネットで調べてみましょう。
APECカードの期間と費用
滞在可能日数 | 90日 |
ビザ代金 | 14000円 |
その他の手続き費用 | 代行手数料など |
正式名称はAPEC・ビジネス・トラベル・カード(ABTC)になり、タイだけでなくAPEC域内の国や地域への入国が円滑にできる許可証。
簡単に言うと、APEC域内で仕事ができる簡単な就労ビザみたいなものですね。
タイの場合は、最大で90日間の滞在が可能。
観光ビザなどとは違い、繰り返し訪タイしても何のお咎めもありません。
その上、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどにも60日の長期滞在が可能、ロシアのビザ免除など、このカードを持っているだけでAPEC加盟国への渡航のハードルがぐっと下がります。
取得条件はなかなか厳しい
APECカードを取得するには、海外と取引、または海外に投資をしている企業に属しているのが条件。
しかし、個人事業主や小さな会社でも取得は可能です。
会社を作って適当に貿易をして1年くらい運営すれば、申請条件が整います。
なお、APECカードを持つ友人によると、商工会議所に入会しておくと手続きがスムーズに行くようです。
観光ビザのように、一個人がサクッと取得できるようなものではありませんが、条件を満たすことができれば便利な方法。
取得には時間がかかる
APECカードの申請前に、会社を作ってから実績を証明するまでに1年くらい、そして申請から取得までにも半年以上かかります。
国内での審査だけでなく、APECに加盟している全ての国に承認してもらう必要があるので、気長に待つしかありません。
なお、APECカードは最高で5年間有効ですが、その効力はパスポートの有効期限に準ずるため、パスポートの残存が5年を切った状態で申請するのはもったいないです。
タイに長期滞在するおすすめの方法
上述した滞在資格を踏まえて、タイに安全にロングステイする方法をまとめていきます。
1年以内の長期滞在
観光ビザとノービザを繰り返せばギリギリ滞在できる可能性あり。
ただし、パスポートにタイの観光ビザがない状態が望ましいです。
- 60日 ノービザ入国 + 延長
- 90日 近隣国でタイ観光ビザを取得してタイで延長
- 60日 ノービザ入国 + 延長
- 90日 近隣国でタイ観光ビザを取得してタイで延長
- 60日 ノービザ入国 + 延長
ポイントとしては、タイに入国するまでに、タイを次回出国する飛行機のチケットを取得しておくこと。
なくても大丈夫な場合が多いですが、タイ入国時にその後の旅程を聞かれた際に、Eチケットのコピーを見せてタイを出る意思を伝えられるためスムーズです。
特に、ノービザで入国する場合は何か言われる可能性が高まるため、利用しない飛行機だとしても、必要コストと考えて事前購入しておくのがおすすめです。
2年以内の長期滞在
上記の観光ビザで1年間を過ごした後、1年の学生ビザを取得します。
しかし、学校に確実に通わなければならないということを考えると、1年目よりは自由度が確実に落ちます。
一方で、素直にタイ語を勉強したいという気があるのであれば一石二鳥です。
3年以内の長期滞在
2年目の学生ビザをタイ語で取得した翌年に、英語で学生ビザを取得します。
中には、英語を勉強するはずのビザであっても、こっそりとタイ語の授業をしてくれる語学学校もあり。
ただし、学生なので、タイ語のビザの時と同じように学校に通う必要があります。
4年以上のロングステイ
観光ビザも2枚取得した、英語の学生ビザもタイ語の学生ビザも取ったという段階で、さらにタイにいたい人は、もうタイランドエリートがいいでしょう。
というか、はじめから3年以上タイにロングステイするつもりなのであれば、タイランドエリートが最もおすすめです。
タイランドエリートなら、タイを出国してビザを取り直すという手続きが不要ですし、入国のたびに「ちゃんとイミグレーションを通過できるかな」と不安になる必要もなし。
色々紹介してアレですが、結局タイランドエリートが精神的にも最も楽です。
パスポートを変えるという技もあり
タイランドエリートは、最安のものでも50万バーツ。
そんなもの払えないという人は、3年目まで学生ビザを取りつつ、パスポートのスタンプをいっぱいにしておくという方法もあります。
パスポートを変えるとは?
国境をまたぐたびに、パスポートには入国スタンプや出国スタンプが押されます。
また、ビザの取得、ビザの延長、リエントリーの取得など、イミグレーションで行われるあらゆる手続きで、パスポートの余白は埋まっていきます。
国によっては、パスポートの余白が見開き2ページ以上余っていないと入国を認めてくれません。
そのため、パスポートの余白の残りが2ページ前後になった場合は、パスポートの残存期間に関係なく新しいものに作り直すことができるのです。
パスポートが新しくなれば、少なくともパスポート上の観光ビザなどの履歴は全てリセットされます。
情報まで消えるわけではない
考慮すべきは、パスポートのスタンプがまっさらになったとしても、個人情報はなくならないという点。
私は10年以上前にタイでパスポートを強奪されタイの日本大使館で再発行しましたが、いまだに入国時やビザの延長時などに「このパスポート再発行したよね」とグダグダ言われます。
上述した通り、パスポート上の観光ビザの数が観光ビザ取得に制限をかけているというルールの場合、逆にパスポートを新しくすれば観光ビザは永遠と取得できると考える人もいるかもしれません。
観光ビザ数枚を取得したパスポートを何らかの形で紛失し、再発行したパスポートで観光ビザをまた取って、限界になったら再び何らかの形で紛失してパスポートを取得しなおす。
実際にやったわけではないのでアレですが、少なくともパスポートに観光ビザのないパスポートが手に入るため、新しい観光ビザを取得しやすいという気になります。
しかし、データには過去の個人情報が全て残っているため、この方法が確実に使えるとは限りません。
50歳以上はリタイアメントビザ一択
50歳になれば、リタイアメントビザが最も安くタイにロングステイできる方法。
50万バーツ以上払ってタイランドエリートを取得するのも方法の1つですが、リタイアメントビザが最も格安です。
その気になれば長期滞在はできる
色んな方法を紹介しましたが、長期滞在がしにくくなってきているというのは、観光ビザや学生ビザなどでロングステイしようとする人の話。
タイランドエリートかリタイアメントビザを取れば、長期滞在は誰でも可能です。
経済的にちょっと厳しい。。。という人も、頑張れば数年は長期滞在ができるため、可能な限りやってみるというのも方法の1つ。
ただし、若者はともかく、目的もなくタイにロングステイする中年の男女はタイ人にも怪しまれる風潮が出てきているので、もう一度タイに長期滞在する理由を考えてみるのもいいかもしれません。
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