「体言」とは、「名詞」や「代名詞」などのことです。そして、体言止めとは、名詞や代名詞で文章を終えること。
例えばこんな感じ。これを体言止めにしないと次のようになります。
印象が大きく変わりますね。
文章のクオリティを見る際には、1文1文の誤字脱字や句読点の使い方などに焦点があてられることもあります。
しかし、全体を見る場合は、文章にリズム感があって読みやすいか、読み進めたいという意欲をわかせられるかなども重要なポイント。
そのリズムを演出する効果的なテクニックこそが、体言止めなのです。使い方をマスターすれば、文章がより読みやすくなるでしょう。
ここでは、
- 体言止めのメリットとデメリット
- 体言止めの効果(例文付き)
- 体言止め使用上の注意点
について紹介していきます。
体言止めのメリットとデメリットとは?
体言止めのメリットとデメリットは以下の通り。
体言止めのメリット
- 文章にリズムが生まれる
- 読者に印象を与えやすくなる
- 単調な文章を避ける
体言止めのデメリット
- 投げやり感が出る
- 文章が軽く、チャラくなることがある
- リズムが悪くなることがある
- 文章の意味が通じにくくなることがある
うまく使うことで大きなメリットを得られる体言止めですが、使い方を間違えるとデメリットが生まれるため、注意が必要です。
体言止めの効果
まずは、体言止めをうまく使った際に、どのような効果が表れるのかを例文で解説していきます。
文章にリズムが出る
これでも別におかしくはありません。しかし、2文目を体言止めにすることで、文章全体にリズム感が生まれます。
特に1文1文が長い場合は、体言止めで余韻を残しつつ文章のリズム感を出すことで、読み手が読みやすくなります。
読者に印象を与えやすくなる
文章を読むうえで、リズム感は非常に重要です。リズム感がなければ、読者が文章に飽きてしまいますし、時には不快感を与えてしまうからです。
そこで効果的なのが体言止めです。うまく使えば文章にリズムが生まれ、すらすらと読ませる文章に早変わりします。
文末が「です」「ます」だけの文章が続くと、どことなく印象に欠けてしまいます。以下は、全く同じ文章の一部を体言止めに変えた表現です。
文章を読むうえで、リズム感は非常に重要です。リズム感がなければ、読者が文章に飽きてしまいますし、時には不快感を与えてしまうからです。
そこで効果的なのが体言止め。うまく使えば文章にリズムが生まれ、すらすらと読ませる文章に早変わりします。
「そこで使うのが体言止め」と言い切ることで、体言止めの印象がより強く残ったのではないでしょうか?「です」「ます」で終わる文章の一部に体言止めの文章があると、そこが際立って読者の目に留まりやすくなります。
単調な文章を避ける
ウェブページをはじめ、様々な文書は「ですます調」で書かれています。しかし、文章の終わりが全て「です」と「ます」だけでは、読者に不快感を与えることも。
特に、数千文字の文章を書く場合は、その不快感を取り除くために体言止めを使わざるを得ないこともあります。
連続する文章の文末の全てを「です」で終わらせるという、できれば避けたい表現。
短文で紹介しましたが、長い文章であっても「です」、もしくは「ます」で終わる文が3つ以上続くと、よくわからない不快感が生まれるのです。
真ん中の文章の「です」を消すだけで、単調さが抜けました。これだけで、単調さから生まれる違和感がなくなります。
体言止めの注意点
様々な効果を持つ体言止めですが、使い方によっては読み手を不快にさせる可能性があるため、気を付けなければなりません。
乱用は文章の質を変える
これがオリジナルの文章。全てを体言止めにしてみましょう。
何となく、ぶっきらぼうで投げやりになっている感じですね。体言止めの乱用は、文章をチャラくしたり軽くするだけでなく、文章の権威や品格を下げる可能性さえあります。
文字数制限のあるTwitterなどに書く場合は、体言止めを連発するのもありかもしれません。また、はじめからこの口調で書いているのであれば違和感はなく、その筆者のスタイルと見なされるため問題ありません。
しかし、ですます調の文章で、いきなりこんな感じが続くと、読者には「急に何?」と思われてしまいます。
こんな感じがベストですね。
箇条書きは体言止めの方が見やすい
〇〇マンションの魅力は以下の通りです
- 広さは10畳です
- 駅から徒歩10分以内です
- 家賃は8万円で収まります
- ペットが飼えます
特にこれでも問題ないのですが、以下の方がすっきりして見やすいはず。
〇〇マンションの魅力は以下の通りです
- 広さ10畳
- 駅から徒歩10分以内
- 家賃は8万円以下
- ペット可
時には読者をイラつかせる体言止めの乱用ですが、箇条書きの場合は、そう感じさせません。むしろ、要点だけを簡潔にまとめた方が読みやすいです。
結論に使う場合は気を付けて
ちょっと一番最後の文章がおかしいですね。「このマンションに入居」で止めてしまうと、
- 既に入居しました
- 入居したいと思いました
- 入居することに決めました
の、どの結論に至ったのかが、わからなくなってしまいます。
なお、時間の流れを考えると①番の意味としては使えません(見に行ったばかりというニュアンスで始めた文章なのに、既に住んでいるのは不自然)。
しっかりと結論付ける場合は以下の通り。
- そのため、このマンションに入居予定。
- そのため、このマンションへの入居を決意。
無理やり体言止めを使う必要はないですが、こんな感じにすれば思いは伝わります。
体言止めQ&A
使い慣れていない人の中には、体言止めの使い方に不安を感じる人もいるでしょう。最後に、体言止めに関するいくつかの疑問点に対する回答をまとめていきます。
体言止めに句点は必要か?
普通の文章内で体言止めを使用する際には、その後に句点(。)を使います。しかし、句点(。)を付けないケースも存在するため、それがごっちゃになっている、という人も多いようです。
句点が必要なケース
「トムヤムクン」で切りたいのですが、句点がないと意味不明です。
よって、文章中に出てくる体言止めには、必ず句点を使います。
句点が不要なケース
以下の場合には、句点を使いません。
- 箇条書きに用いる場合
- 引用元などを付け加える場合
例えば、箇条書きで句点を使うとこうなります。
- 箇条書きに用いる場合。
- 引用元などを付け加える場合。
あってもおかしいと感じない人もいるかもしれませんが、一般的には使いません。
また、引用元というのは、例えばこんな感じ。
「書く」行為や「話す」行為をアウトプットとすると、インプットは「読む」行為と言えます。質の高いアウトプットをするためには、インプットが欠かせません。(池上彰『伝える力』参照)
「池上彰『伝える力』参照。」のように句点を付けなくても大丈夫です。通常は()でとじられているか、そこで文章が終わるため、句点を付けなくてもわかります。
引用に関しては、他の記載方法もあります。しかしネットなどで紹介する場合は、リンクを貼り付けることができるため、簡潔に伝えるだけでも大丈夫です。
体言止めの反対はなんて言う?
冒頭で、体言とは「名詞」や「代名詞」だと述べました。もう少し深く説明すると、体言とは「活用しない言葉」のことを言います。
そのため、接続詞、連体詞、副詞なども体言に含まれます。「とても」「決して」「しかし」などは活用しませんからね。
つまり、体言の反対は「活用する言葉」ということになります。体言の反義語は用言と呼ばれ、動詞、形容詞、形容動詞がそれにあたります。
体言
- 名詞
- 代名詞
- 数詞
- 連体詞
- 副詞
- 接続詞
- 感動詞
用言
- 動詞
- 形容詞
- 形容動詞
もちろん、体言止めの反対の用言止めというテクニックもあります。
「美しい」という形容詞で一文が終わっているため、用言止めとなります。文章の質には影響しませんが、体言止めとゴッチャになっている人もいると思うので、言葉だけでも覚えておきましょう。
体言止めのテクニックまとめ
体言止めをまとめると、こんな感じになります。
体言止めの効果・メリット
- 文章にリズムが生まれる
- 読者に印象を与えやすくなる
- 単調な文章を避ける
体言止めの注意点・デメリット
- 投げやり感が出る
- 文章が軽く、チャラくなることがある
- リズムが悪くなることがある
- 文章の意味が通じにくくなることがある
文章を書いた後で必ず読み返し、文末表現で引っかかる部分があったら、試しに体言止めを使ってみましょう。
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