日本では元来、縦書きが主流で、数の表現にも漢字が使われていました。しかし、近年よく目にするレポートやウェブサイトなどには横書きが使われます。
そこで曖昧になるのが数字を使った表現。
縦書きだと漢数字を使い、横書きの場合は算用数字なのではないか?と考える人もいるでしょう。
その考え方が間違いというわけではないですが、横書きでも漢数字を使わなければならない表現がいくつか存在します。
その使い分けは、法則を覚えてしまえば実に簡単。
ここでは、
- 漢数字を使うべき場面
- 算用数字を使うべき場面
を明確にしていきます。
漢数字と算用数字の違い
まずは、そもそも漢数字と算用数字が何なのか、について簡単に紹介。
漢数字とは漢字で表す数字のこと
漢数字とは、その名の通り漢字で表す数字のこと。
このあたりが、メインで使われる漢数字です。
漢数字を多用すると、視覚的に堅いイメージが持たれやすいです。
算用数字とはアラビア数字のこと
算用数字とは、算数や数学で使い慣れているアラビア数字のこと。
これらの数字を組み合わせて数を表します。
算用数字を多用すると、視覚的に柔らかい感じが持たれやすいです。
漢数字表記が必要な表現は?
前提として、どんな数字であっても漢数字を書いておけば間違いではありません。日本語は従来、縦書きが主流であり、縦書きには漢数字が使われていたためです。
しかし、横書きの場合は算用数字を使うことの方が多いかもしれません。実際に、算用数字の方が読みやすいですしね。
ただし、その中でも漢数字を使わなければならないケースが存在します。まずは、それを例文とともに紹介していきます。
他の数字に置き換えられない言葉
↓
〇 一日中勉強したからといって、一人前になれるわけではない。
「一日中」は「二日中」、「三日中」とは言いませんよね?同様に、「一人前になる」も「二人前になる」、「三人前になる」とは言いません。このように、他の数字に置き換えると意味が分からなくなる単語には漢数字が使われます。
例
- 1年中 ⇒ 一年中
- 世界1周 ⇒ 世界一周
- 第6感 ⇒ 第六感
固有名詞
「ラーメン二郎」のことを「ラーメン2郎」と書く人はいません。同様に、固有名詞をはじめ、一般的に漢数字が使われるものを算用数字にすることはできません。
↓
〇 五重塔が有名な法隆寺は奈良にあるけど、三十三間堂は京都にある。
違和感しかないですね。どちらも算用数字にはできません。
例
- 鈴木1郎 ⇒ 鈴木一郎
- 第2次世界大戦 ⇒ 第二次世界大戦
- 3国志 ⇒ 三国志
- 4国 ⇒ 四国
- 麻布10番 ⇒ 麻布十番
熟語や慣用句など
↓
〇 二束三文でも、売れれば無一文ではなくなるが、五十歩百歩だ。
無理やり数字の入る熟語を繋げてみましたが、算用数字だとおかしいです。熟語や慣用句は、漢数字もその言葉の構成要素の1つになるため、算用数字は使えません。
例
- 1年の計は元旦にあり ⇒ 一年の計は元旦にあり
- 1寸の虫にも5分の魂 ⇒ 一寸の虫にも五分の魂
- 4苦8苦 ⇒ 四苦八苦
- 7転び8起き ⇒ 七転び八起き
その他の漢数字が使われる場面
数字が曖昧な場合や日本の伝統的な文化にかかわる言葉は、全て漢数字で表します。
↓
〇 孫の七五三を祝うために十数人が集まった。
「七五三」は日本の伝統行事なので算用数字は不可。以下も同様。
- 7回忌 ⇒ 七回忌
- 12単 ⇒ 十二単
正確な数がわからない場合も、同様に漢数字を利用します。
- 数100人 ⇒ 数百人
- 数1000円 ⇒ 数千円
算用数字の方がよい表現とは?
全ての数字を漢数字で表しても問題ありませんが、横書きの場合は算用数字の方が読みやすいと感じる人も少なくありません。
ルールがわかっているのであれば、それにのっとった上で算用数字を用いるのもいいでしょう。
算用数字が確実に使える数字表現として真っ先に挙げられるものが、数えられる物事。
〇 二歳上の兄貴に、ボールペン一本とノート二冊、コーヒー三杯を買って来いと言われた。
〇 2歳上の兄貴に、ボールペン1本とノート2冊、コーヒー3杯を買って来いと言われた。
類別詞とともに使われる数字には、算用数字が使えます。ただし、漢数字でも間違いではありません。
例
- 1位、2位、3位
- 1台、2台、3代
- 1枚、2枚、3枚
- 1年、2年、3年
- 1匹、2匹、3匹
など
また、年号など、漢数字にすると見るからに読みにくくなるような場合も、算用数字を使うのが無難。
↓
大化の改新は645年、十七条の憲法は604年。
漢数字は堅い印象を与える一方で、算用数字の方が読みやすく、やわらかいイメージになります。
この表現も、カタカナと漢数字の組み合わせは非常に読みにくくなるため、算用数字を利用した方が視覚的にわかりやすいです。
ややこしい表現も存在
ルール通りであれば、「一番」を「1番」に変えることはできません。
それは、「一番好きな食べ物」を「二番好きな食べ物」、「三番好きな食べ物」と変化させることができないから。よって、この場合は漢数字を使うことになります。
ただし、同じ「一番」でも、算用数字に置き換えられるケースがあります。
成績が「2番」、「3番」になることもあるため、この場合はどちらでも構いません。
ということがあるため、「一番好きな食べ物」の記載が「1番好きな食べ物」となっていても、特に違和感はありません。むしろ、算用数字の方がしっくりくる、と感じる人もいるのではないでしょうか?
このように、ルール上は漢数字を利用すべきところであっても、視覚的にしっくりくるような場合は、算用数字を使った方がわかりやすいようなケースも存在します。
まずは実際に書いてみて、どっちの方がしっくりくるかで使用するものを決めるのもいいかもしれません。
漢数字と算用数字の使い方まとめ
簡潔にまとめるとこんな感じ。
漢数字を使うケース
- 縦書きは原則、全て漢数字で大丈夫
- 他の数字に置き換えられない言葉
- 固有名詞
- 熟語や慣用句
- 日本の伝統や文化にかかわる言葉
- 正確な数がわからない場合
算用数字が使えるケース
- 類別詞と使う数字
- 漢数字だと読みにくくなる場合
横書きでは、算用数字の方が読みやすくなりますが、漢数字を使わなければならないところもあるため注意しましょう。
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